海野十三 怪塔王
海野十三とは、日本におけるSFの始祖となった小説家。本名は佐野昌一。徳島市の医家に生まれ、早稲田大学理工科で電気工学を専攻。逓信省電気試験所に勤務するかたわら、1928(昭和3)年、「新青年」に『電気風呂の怪死事件』と名付けた探偵小説を発表して小説家としてデビュー。以降、探偵小説、科学小説、加えて少年小説にも数多くの作品を残した。太平洋戦争中、軍事科学小説を量産し、海軍報道班員として従軍した海野は、敗戦に大きな衝撃を受ける。敗戦翌年の 1946(昭和21)年2月、盟友小栗虫太郎の死が追い打ちをかけ、海野は戦後を失意の内に過ごす。筆名の読みは、「うんのじゅうざ」、「うんのじゅうぞう」の二通りが流布している。丘丘十郎(おか・きゅうじゅうろう)名でも作品を残し、本名では電気関係の解説書を執筆している。
一彦の探偵眼
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怪塔王というふしぎな人物のために、軍艦淡路をこわされたり、飛行機をうちおとされたりしたものですから、わが海軍は、いよいよこれは一大事と怪塔王を本式に討伐することになりました。
なにしろめずらしい新兵器をもっている怪塔王を相手とするのですから、その作戦もなかなかたいへんです。
まず第一におしらせしなければならぬことは、秘密艦隊というものが編成されたことです。この司令官には、池上少将(いけがみしょうしょう)が任命されましたが、この秘密艦隊は、それこそまったくの極秘のうちにつくられたので、海軍のなかでも知らぬ人がたくさんありました。
怪塔王を討伐するために、艦隊ができたということは、まったく今までになかったことです。それを見ても、いかにわが海軍では怪塔王をおそるべき敵とおもっているかがわかるでしょう。
○○軍港にうかんでいる旗艦六甲(きかんろっこう)の司令官室において、池上少将は、いま幕僚を集めて秘密会議中です。そこには塩田大尉と一彦少年の顔も見えます。いや、見えるどころではなく、二人はいま、司令官に大利根博士邸のことを報告しているところなのです。
司令官はじめ幕僚は、塩田大尉の報告があまりに怪奇なので、目をみはったり、首をふったり、拳(こぶし)をかためたりして、おどろいています。
